研究課題/領域番号 |
22500297
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
濱田 知宏 日本医科大学, 医学部, 助教 (90312058)
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研究分担者 |
佐久間 康夫 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70094307)
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キーワード | 性分化 / 性差 / エストロゲン / 細胞移動 / 視索前野性的二型核 / 分界条床核 |
研究概要 |
本研究の目的は、雄で有意に大きい神経核である視索前野性的二型核(SDN-POA)をモデルとして、その形成過程を可視化し、脳の性分化機構の解明を目指すものである。前年度までに我々の作出したエストロゲン受容体遺伝子プロモータートランスジェニックラット(ER-GFPラット)がSDN-POAの可視化を実現し、スライス培養法とタイムラプス撮影により、SDN-POA形成過程の可視化を現実のものとした。今年度はin vitroにおけるSDN-POA形成過程のみならず、in vivoでの検討を行った。すなわち、胎仔脳における組織学的な検討を行い、E18には分界条床核(BNST)領域でGFPの発現が観察されること、E21にSDN-POAでのGFP発現が観察されることが示され、in vitroの結果と一致することがわかった。また性差形成に重要なERα発現がGFP発現細胞でなく、その周囲に観察され、SDN-POA周囲の細胞が性分化機構に果たす役割という新規な考えを提唱することになった。また、ER-GFPラットが性差の存在するBNST主部を特異的に可視化しうるという結果も得られ、SDN-POAのみならず、BNST主部についても、性差形成機構について検討が可能となった。これら性差の存在する神経核の機能としては性指向性に着目して検討を行い、性成熟期のステロイドホルモンが性指向性決定に重要であることを見出した。以上の結果は第89回日本生理学会大会で報告した。現在、性指向性とSDN-POAおよびBNST主部との関係について、cFos発現に伴いRFPを発現するトランスジェニックラットとER-GFPラットのダブルトランスジェニックラットを作出し、検討を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の研究計画に則り、胎仔脳におけるEGFPおよびERα発現について知見が得られ、性指向性とSDNやBNSTとの関係についても結果が得られつつある。またER-GFPラットがBNSTのマーカーになることも明らかとなったため、順調な進展だと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は性差形成機構としての細胞移動制御をエストロゲンがどのように調節しているのか、細胞内および細胞外での分子に着目して研究を進める。またSDN-POAおよびBNSTの性指向性に対する役割を明らかにし、その神経回路や膜特性について検討を加える予定である。
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