研究概要 |
申請者らは、シクロオキシゲナーゼ(COX)-1がGnRH含有量の調節に関与する可能性があること、COX-1は視索前野(POA)のGnRHニューロン細胞体の周囲ではミクログリア(MG)に局在すること、POAのミクログリアにはエストロゲン受容体α・エストロゲン膜受容体およびプロゲステロン受容体は観察されないことを報告してきた (日本生理学会,2012; Endocr J, 2013)。 本年度は、COX-1の産物の1つであるPGE2のGnRHニューロン活動への影響について電気生理学的手法を用いて検討した。その結果、POAのGnRHニューロンのminiature EPSCs頻度はPGE2により発情前期では上昇し、発情休止期では低下することが明らかとなった。これはPGE2がPOAに作用し、性周期依存的にGnRHニューロンの電気生理学的性質を修飾することを示唆する(日本生理学会, 2013)。 次に、感染ストレスによるLH分泌抑制にMGの活性化が関与するのかをミノサイクリン(Mino)を用いて検討した。その結果、Minoの前投与により低濃度LPS投与によるLHサージ状分泌抑制は減弱するが、高濃度LPSによる抑制は維持されることが示された。また、Minoの前投与はLPSによる血中サイトカインの上昇に影響しないことが示された。MinoはMG活性化抑制作用を有することから、これら結果より感染ストレスによるLH分泌抑制の一部にMGが関与する可能性が示唆された(日本生理学会, 2013; 論文投稿準備中)。 GnRHニューロン機能のアストログリアによる修飾は広く研究されているが、脳内の細胞の15%を占める細胞集団であるMGによる修飾については殆ど報告がなかった。本申請課題により、MGも生理的条件および感染ストレス条件において、GnRHニューロンの機能を調節する可能性が示唆された。
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