研究概要 |
電気生理学的手法を用いたBDNFプロドメイン(BDNF pro-peptide)の機能解析 BDNFはLTPを促進しLTDを抑制する(Reichardt,Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci, 2006)。一方、proBDNFはLTDを促進しスパイン密度を低下させる(Woo et al., Nat. Neurosci., 2005 ; Koshimizu et al., Mol. Brain, 2009)。つまり、BDNF依存的なシナプス可塑性において、BDNFプロドメイン(BDNF pro-peptide)はBDNFに対する相反的に作用する可能性が推察される。本年度は、1)BDNFプロドメイン単独処理によるbasal synaptic transmissionへの効果について検証した。つまり、昨年度見出したBDNF pro-peptideのLTD促進効果の分子メカニズムについて電気生理学および細胞イメージングの解析を行った。BDNF pro-peptide等の組換え蛋白質の調整は21年度と同様に行った。その結果、BDNF pro-peptideのLTDにはp75受容体が必須であることが、p75受容体アンタゴニストREX、p75ノックアウトマウスを用いた研究から見出された。このようなBDNF pro-peptideについて、AMPA受容体GluAlのendocytosisに対する効果を培養海馬神経細胞のイメージングにより検証した。その結果、BDNF pro-peptideで処理した細胞では、NMDA添加により促進されるGluAlのendocytosisが有意に促進されていることが見出された。以上の結果から、BDNF pro-peptideのLTD促進作用はp75受容体を介していること、LTDメカニズムであるAMPA受容体のendocytosisを促進する作用があることが見出された。
|