研究課題
マウスにおける眼優位可塑性をc-fos遺伝子のタンパク産物を免疫組織化学的に染色することによって評価するシステム(c-fos activity mapping法,cFAMM)を確立した。まず、感受性期のピーク(生後4週齢)で片眼瞼縫合術を施行し、2週間にわたり単眼視させた。その後、いずれかの眼球硝子体腔にTTXを注入することで網膜神経活動を抑制し、十分に暗順応させ、その後、1時間の視覚刺激を与え、灌流固定した後に抜脳した。免疫組織化学的にc-fos遺伝子のタンパク産物を染色した。視覚刺激と同側の第1次視覚野、両眼視領域第4層のc-fos陽性細胞数を計測することによって、単眼遮蔽の効果を評価することが明らかになった。これまで、眼優位可塑性の調節に重要な働きをしていると報告されている中枢ノルアドレナリン、セロトニン投射系を選択的に破壊するために、それぞれN-(2-chloreeth1)-N-ethy1-2-bromobenzy1amine(DSP-4)、p-chloropheny1alanine(pCPA)の末梢投与を行い、それぞれdopamine beta haydroxylase(DBH)、セロトニンに対する特異抗体を用いて視覚野における両システムの選択的破壊を惹起する条件を明らかにした。cFAMMを用いた検討の結果、中枢ノルアドレナリン系破壊動物においては、本来感受性期の単眼遮蔽によって正常眼の刺激により誘導されるc-fos増強が有意に抑制されることが明らかになった。また、中枢セロトニン系破壊動物においては、抑圧されるはずの遮蔽眼の刺激により誘導されるc-fosが抑圧されないことが明らかとなった。以上の結果から、これら中枢アミン系が、それぞれ異なる様式で眼優位可塑性の調節に関与していることを確認することができた。ドレブリン遺伝子の欠損マウスでは、視覚刺激によるc-fos遺伝子の発現誘導そのものが抑制され、DSP-4投与直後と同様であることが明らかになった。
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