前腹側脳室周囲核(AVPV)は、雌の生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌パターン形成に関与すると考えられている。これまでの我々のプロテオミクス解析の結果から、AvpVの性差形成時期(生後1日)に部位及び時期特異的に雌雄差がある蛋白質としてcollapsin response mediator protein-4(CRMP4)が同定された。解析の結果、生後1日でのCRMP4蛋白質及びmRNA発現量は雄の方が雌より有意に高かったが、雌雄差形成後には蛋白質及びmRNA発現量の雌雄差は消失した。そこで本研究では.CRMP4ノックアウトマウスを用いて、CRMP4遺伝子の欠損により出生率や生殖時期・生殖周期に異常が出現するかをまず調べた。更に、野生型のAVPVで雌雄差が見られるドーパミン作動性ニューロンについて.野生型マウスとCRMP4ノックアウトマウスとを比較検討した。また、AVPV神経核の大きさや細胞数についても比較した。その結果、CRMP4遺伝子の欠損により、出生率が低下することが明らかとなった。また、CRMP4ノックアウトマウスでは、ドーパミン作動性ニューロンの細胞数が雌のみで増加し、ノックアウトマウスでは野生型に比べ、雌雄差が拡大していた。AVPV神経核の大きさや細胞数にはノックアウトマウスと野生型マウス間で統計的に有意な差は見られなかった。この結果から、我々は.雌のAVPVドーパミン作動性ニューロン数の調節にCRMP4が重要であることを発見した。今後、CRMP4遺伝子の欠損による出生率低下の原因、CRMP4によるドーパミン作動性ニューロンの細胞数調節メカニズム、CRMP4が他の神経伝達物質に及ぼす影響などについて調べる予定である。
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