研究課題
視索前野・視床下部領域に存在する幾つかの神経核(性的二型核)は、周生期のホルモン環境により雌雄で異なる分化(性分化)を起こすことが知られている。本研究では、それらの神経核のうち、前腹側脳室周囲核(AVPV)に着目し、性分化過程に発現量が雌雄で異なるタンパク質をプロテオミクスにより同定し、さらに遺伝子欠損マウスを用いて、そのタンパク質の機能を明らかにする一連の研究を行った。プロテオミクス解析により、Collapsin Response Mediator Protein 4 (CRMP4)がAVPVの性分化時期に性差があり、性分化終了期では性差が消失するタンパク質として同定された。CRMP4は、mRNAレベルでも性分化時期でのみ発現に雌雄差があり、別の性的二型核であるSDN-POAでは、CRMP4やそのmRNAの発現に雌雄差は見られないことが分かった。そこでCRMP4遺伝子欠損マウス(CRMP4-KOマウス)を用いて、性周期や思春期発来にどのような変化が起こるが調べたが、それらには有意な変化はなかった。AVPVの大きさや細胞密度にも影響はなかった。しかし、AVPV中に存在するtyrosine hydroxylase (TH)陽性細胞数を8週齢マウスを用いて調べたところ、雌ではTH陽性細胞数が有意に増加していることが分かった。さらに、胎生15日、生後0日についてもAVPV中のTH陽性細胞数を計測したところ、胎生15日では雌雄間および野生型・CRMP4-KOマウス間にもTH陽性細胞数に違いがなかったが、生後0日では、雌のCRMP4-KOマウスではTH陽性細胞が有意に増加しており、野生型では見られない雌雄差が既に現れることが分かった。これらの結果より、CRMP4タンパク質がAVPVのTH細胞の数の調節に関与していることが明らかとなり、CRMP4タンパク質の新しい機能を発見できた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Dev Neurobiol.
doi:10.1002/dneu.22076.
J Anat.
巻: 221 ページ: 341-51
Doi:10.1111/j.1469-7580.2012.01544.x.