研究課題/領域番号 |
22500320
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
森 隆 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60239605)
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研究分担者 |
山口 晴保 群馬大学, 医学部, 教授 (00158114)
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キーワード | 神経科学 / 神経変性疾患 / 神経病理学 / アルツハイマー病 / 遺伝子改変マウス / ポリフェノール / アミロイドβ蛋白 |
研究概要 |
【研究背景】アミロイド前駆体蛋白(APP)の段階的酵素切断は、アルツハイマー病患者の脳内に蓄積するβ-アミロイド斑を構成するアミロイドβ蛋白(Aβ)の産生に必要不可欠な役割を果たしている。近年、Aβ産生を抑制する自然物質由来のポリフェノール類に対する研究に注目が集まっている。【目的・方法】タンニン酸を脳アミロイド症のモデルマウス(PSAPPマウス;APPsw,PSEN1dE9)に経口投与し、認知機能とアルツハイマー様病態を評価した。【結果】タンニン酸の6ヶ月間の経口投与は、行動学的障害(過活動、物体認識能の低下、空間認知機能障害)を改善した。一方、タンニン酸投与は、正常マウスの行動機能の亢進には影響しなかった。タンニン酸を投与したPSAPPマウスは、脳実質・脳血管のβ-アミロイド沈着の軽減そしてoligomersを含む種々のAβレベルの減少を示した。これらの効果は、β-C-terminal APP fragmentの酵素切断の低下、soluble APP-β産生量の減少、β-site APP cleaving enzyme1の蛋白発現・酵素活性の低下、そして脳炎症反応の軽減と共に起こっていた。さらに、mutant human APPを過剰発現する神経細胞様細胞をタンニン酸で処置したところ、アミロイド産生系APP酵素切断の抑制に関連してAβ産生の低下を示した。【結論】以上、これらの結果は、タンニン酸のサプリメントとしての摂取が、β-secretase活性そして脳炎症反応の抑制によるアルツハイマー病の治療に有効である可能性を示唆するものである。 平成24年度以降は、新たな食物種子由来フェノール化合物(フェルラ酸)の経口投与による認知機能障害とアルツハイマー様病態の改善・軽減効果のメカニズムを明らかにする研究を行う予定でいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22-23年度において、タンニン酸のサプリメントとしての摂取が、β-secretase活性そして脳炎症反応の抑制によるアルツハイマー病の治療に有効であるとする研究データを集積できた。研究成果をJ Biol Chem,287(9):6912-6927,2012に掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、新たな食物種子由来フェノール化合物(フェルラ酸)の経口投与による認知機能障害とアルツハイマー様病態の改善・軽減効果のメカニズムを明らかにする研究を行う予定でいる。
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