本年度はoligodendrogliomaの臨床遺伝学的解析を行った。【方法】対象は3年間に集積された形態学的にoligodendrogliomaと診断された133例である。染色体1p36と19q13に対するプローブを用いたFISH法を行い、既に公表されているカットオフ値を適応して欠失の有無を判定した。イソクエン酸脱水素酵素1型(IDH-1)の変異については、R132H変異特異抗体を用いた免疫組織化学を施行した。また、p53遺伝子産物の発現については抗wild type p53抗体を用い、陽性細胞が10%以下の場合を陰性と判定した。a-internexinとCICの発現をそれぞれ84例と53例の悪性膠腫で検討した。【結果】1)113例中79例が古典的組織像を、64例が非古典的組織像を示した。2)形態学的に“古典的”と判定されp53の発現が陰性であった腫瘍のうち89%が1p/19q共欠失を示した。3)p53陰性・IDH-1 R132H陽性腫瘍872%が1p/19q共欠失を示した。4)Co-delted oligodendrogliomaにおけるa-internexinとCICの発現はそれぞれ56%、42%であった【考察】IDH-1変異と1p/19q共欠失は独立した予後因子であることが知られていることを考慮すると、古典的組織像を示し、かつ、p53陰性・IDH-1 R132H陽性・1p/19q共欠失陽性のoligodendrogliomaは臨床遺伝学的に均一な腫瘍である可能性が示唆された。a-internexinとCICはサロゲート・マーカーとして不十分である。
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