研究概要 |
我々はニューロン、シュワン細胞の各培養系ならびに両者の共培養系を用いて、軸索変性・再生、髄鞘形成・脱髄等に関与する諸因子の解析を進めている。本年度の研究成果として、1)神経再生促進因子galectin-1がGDNF依存性小型後根神経節(DRG)ニューロンに強く発現していること(Sango et al,Basic Principles of Peripheral Nerve Disorders,2012)、GDNFの神経突起伸長促進作用にgalectin-1の発現誘導が関与することを明らかにした(Sango et al,in preparation)。2)成熟ラット末梢神経の初代培養系から樹立したシュワン細胞株IFRS(immortalized Fischerrat Schwalln cells)1は、成熟シュワン細胞としての特性を保持しており、DRGニューロンとの共培養で髄鞘形成がみられた(Sango et al,J Neurosci Res,2011)。3)高グルコース負荷IFRS1細胞における糖化関連タンパクgalectin-3、RAGEの発現誘導を明らかにし、糖尿病性神経障害研究モデルとしての有用性を示した(Sango et al,Exp Diabetes Res,2011)。4)IFRS1を用いて、抗不整脈薬アミオダロンによるオートファジー・脱髄誘導の機序を解析中である(来年度日本神経学会にて発表予定)-。5)IFRS1とPC12細胞との共培養系を確立し、髄鞘形成を確認した(Sango et al,Histochem Cell Biol,2012)。株化細胞同士による共培養系の確立はほとんど前例がなく、ニューロン、シュワン細胞のクロストークを効率よく安定して解析する上で極めて重要なツールと考えられた。
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