研究概要 |
家族性脳血管性認知症のCADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephaiopathy)は、原因遺伝子としてNotch3が同定されているが、いかにして血管平滑筋細胞周辺へのNotch3の蓄積や平滑筋細胞の変性・消失が引き起とされるかについては不明である。変異Notch3による細胞への影響を解析したところ、野生型及び変異型(R133C及びC185R)Notch3を誘導するHEK293細胞系において、変異Notch3は野生型Notch3に比べて重合しやすいことが明らかとなった。また、小胞体内に変異Notch3の重合体が長期間とどまることで、細胞の増殖を低下させ、他のストレスに対して脆弱になることが考えられた。よって、変異Notch3の重合体の分解を行なうことは、CADASILの治療薬の開発につながる可能性がある。そこで、この細胞系を用いて重合体の分解を促進する薬剤のスクリーニングを行った。変異型Notch3を誘導した後、各種低分子化合物を添加し、Notch3抗体を用いたウエスタンブロットと免疫細胞化学的解析によって薬剤の効果を検討した。その結果、現在までにamyloidβ(Aβ)のフィブリル形成を阻害する薬剤である4,5-dianilinophthalimide(DAPH)やstaurosporine aglycone(SA)等がNotch3の重合体の分解に効果があった。本研究で用いた変異Notch3を発現する細胞を用いたスクリーニング法はCADASILの治療薬開発に有用であると思われる。
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