血管性認知症において原因遺伝子Notch3が同定されている家族性脳血管性認知症CADASIL(Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarcts and Leukoencephalopathy)に着目し、Notch3が血管の変性にどのように関わるか検討を行い、血管変性メカニズムの解明を試みた。本年度は変異型Notch3ノックインマウスを用い、変異型Notch3が引き起こす形態変化や分子変化を解析した。その結果、老齢ノックインマウスでは、脳においてNotch3タンパク質の蓄積が確認された。また、CADASILの病理変化は末梢の血管にもみられることから、尾の動脈を観察したところ、平滑筋細胞層の形態的変化、およびNotch3タンパク質の蓄積が認められた。さらに、慢性ストレスを負荷したノックインマウスでは、若年でも脳と尾の動脈におけるVSMCsマーカータンパク質の減少と、尾動脈における平滑筋細胞層の構造変化が認められた。このことから、変異遺伝子と環境要因の相互作用により疾患の発症が促進される可能性が考えられた。今回構築したCADASILモデルマウスを、病理学的、生化学的、分子生物学的にさらに詳細に解析することで、CADASILの発症機序の解明のみならず、大脳細動脈病変や皮質下性認知症などの脳血管障害の病態解明に貢献できると思われる。
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