研究概要 |
本年度は主に研究計画の次の2点について基礎的なデータを得た。 1)軸索及び神経週末における翻訳装置の存在の証明 初代培養した海馬神経細胞及び、後根神経節神経細胞を免疫細胞化学的染色した結果、主に成長円錐(伸展する軸索の先端)において翻訳因子及びリボソーム構成蛋白の存在を見いだした。翻訳伸展因子であるeukaryotic elongation factor 2(eEF2)および、リボソーム構成蛋白であるP0,S6の染色が成長円錐で見られた。成長円錐マーカーとしてはGAP43を用いて、2重染色を行った。現在さらに他の翻訳因子抗体を用い、翻訳装置の存在を網羅的に検討中である。 2)軸索内局所的翻訳活性化のトリガーの探索 初代培養海馬神経細胞を用いた実験では、研究計画通りWnt3aによる翻訳活性化が確認された。RIラベルしたメチオニンの取り込みがWnt3aによって増強することが明らかとなった。ポジティブコントロールとしてはこれまで申請者が報告してきたbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)を用いている。Wnt3aによるシグナルは、主にGSK3βからeIF2Bεを介した系であり、現在eIF2Bの基質となるeIF2を精製しおわり、活性測定にむかうところである。さらに局所的作用を知るために成長円錐の画分での生化学的解析を行っている。今後は免疫細胞化学的にリン酸化特異的抗体などを用いて解析する予定である。
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