研究課題
われわれはこれまでに摂食亢進性神経ペプチドの一つであるメラニン凝集ホルモン(MCH)のレセプター(MCH1R)に対する特異的阻害剤、TPI1361-17(以下TPI)を同定した。この化合物はマウス腹腔内投与により著明な摂食抑制作用を示す。本研究は、この化合物の末梢臓器における作用点を明らかにすることで、抗肥満作用の薬理学的な裏付けを行ない、臨床応用への道を開くことを目的とする。まずMCHの末梢でのエネルギー代謝とMCHの相関を検討した。健常成人38名の経口糖負荷試験において、MCH濃度は空腹時(前値)150pg/ml程度だったのが糖摂取後30分で80、60分後には70pg/mlに低下した。同時に測定した末梢血インスリン、レプチン、アディポネクチン、レジスチンのうち、インスリンのみがMCHと有意の逆相関を示した。MCHは末梢循環中に存在し、エネルギー状態に対してダイナミックに応答することを明らかとなった。TPIを食餌誘発肥満マウスに長期反復腹腔内投与したところ、用量依存性に著明な体重抑制効果および摂食抑制効果がみられた。また、投与一ヶ月で血糖、血液脂質、および体脂肪率を改善効果が確認できた。TPI腹腔内投与はMCH1Rノックアウトマウス(MCH1KO)に無効であったことから、この作用にはMCH1Rが必須である。マウスにおける薬物動態試験で、TPIは血液脳関門を通過しないことを確認しているが、以上の結果と併せてTPIは向精神作用を持たない安全な抗肥満薬である可能性が示された。化合物の不足により計画に遅れが出ており未だTPIの末梢標的臓器の同定には至っていない。しかし、本研究によりMCHが中枢のみならず末梢においてもエネルギー代謝に関連する生理活性物質でありTPIは末梢作動性の抗肥満薬となり得る可能性が示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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