研究課題/領域番号 |
22500332
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森吉 弘毅 京都大学, 医学研究科, 医員 (50263091)
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キーワード | 神経科学 / シグナル伝達 / グルタミン酸受容体 / 蛋白質 |
研究概要 |
本研究は、中枢神経系の可塑性など高次脳機能に深く関わる代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)について、新たなシグナル伝達機構の解明を行うものである。本年度はmGluRの多様な機能発現に直接関わっているC末細胞内領域の機能について詳細な解析を行い、複数の特徴的なアミノ酸モチーフが複合的に作用し、細胞膜表面の受容体量をダイナミックに調節している事を見出した。このメカニズムにはそれぞれ特異的な蛋白相互作用が関わっていると思われるが、現時点では詳細は明らかになっていない。この点を明らかにするための基盤技術として、従来開発を進めてきた新規スリーハイブリッドベクター系の改良を並行して実施し、3種類の蛋白あるいはアミノ酸モチーフが関与する複合的な蛋白相互作用を効率的に解析できる系を確立した。これを用いてmGluR細胞内領域が関与する蛋白相互作用の網羅的解析を進め、mGluR機能調節メカニズムの全体像解明に繋げていく計画である。シナプス膜上の受容体量のダイナミックな調節は、神経可塑性の主要なメカニズムとして働いており、これまでの成果はその分子機構に迫るものとして有意義であると考えている。将来的には、この分子機構を調節できるような薬物の開発によって、シナプスの機能障害であると考えられている発達障害や自閉症に対する治療薬の開発も期待される。本研究で得られた知見は創薬の新たなターゲットとなる可能性があるだけでなく、本研究の過程で開発を行ったスリーハイブリッドベクター系は、創薬においても有用なツールとして活用できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mGluR C末細胞内領域に異なる機能を持つ複数の蛋白モチーフが存在する事が明らかになりつつあり、分子構造と蛋白機能を結びつける新たな知見が得られた。技術的にもスリーハイブリッドベクター系の改良が進展し、より高機能の実験系が開発できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかになったmGluR C末細胞内領域に存在する複数のアミノ酸モチーフの機能解析を目的として、独自に開発したスリーハイブリッドベクター系を利用して蛋白相互作用の網羅的解析を行い、mGluRシグナル伝達機構の全体像を解明する。
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