研究概要 |
神経細胞が次の神経細胞に情報を伝えるシナプス伝達の主たる過程は、神経伝達物質の放出により行われている。従って、神経伝達物質の放出の過程を解明していくことは、シナプスの可塑性ひいては記憶形成の過程を理解する上で重要である。これまで、私共は、神経伝達物質の放出にSNARE系の活性制御タンパク質であるトモシンが抑制的に働くことを明らかにしている。昨年度の研究により、トモシンがCa^<2+>センサータンパク質シナプトタグミンと結合することにより,神経伝達物質の放出を抑制することを明らかにている。 本年度は、トモシン-シナプトタグミン複合体の神経伝達物質放出機構における作用点を解析し、以下の結果を得た。 1)シナプスへのCa^<2+>の流入によりプライミングされたシナプス小胞が融合する。その後、トモシンがシナプトタグミンと結合することにより,残ったシナプス小胞の融合を抑制した。 2)この新規素過程クロージングによりシナプス終末に適切な数の小胞が絶えずプールされ,神経活動に依存した神経伝達物質の連続した放出を可能にした。 これらのことから、トモシン-シナプトタグミン複合体が新規素過程(クロージング)を形成することにより、神経伝達物質の連続した放出を制御していることが明らかになった。 このように本年度は、トモシンの作用機構について当初の計画以上の成果をあげることができた。
|