研究課題
本年度は神経軸索及び成長円錐の翻訳トランス因子のうち、マイクロRNA(miRNA)について解析した。miRNAは17-25塩基からなる非コードRNAであり、ターゲットとなるmRNAと結合し翻訳を制御することが知られている。神経細胞においては、細胞体及び樹状突起における局在は既に解明されているが、軸索・成長円錐においては全くの不明であった。我々は軸索におけるmiRNAの局在を解明するために、軸索を高純度かつ高収率で単離するための新規培養法「ニューロンボール法」の開発に成功した。大脳皮質神経細胞を用いてニューロンボール培養法を行い、軸索と細胞体画分を調製したところ、核小体RNAが1/1000しか混入せず、また樹状突起マーカーであるMAP2が免疫プロットでほとんど検出されなった。よって、この方法を用いて細胞体・樹状突起を含まない高純度の軸索画分が単離できることが示された。次に軸索と細胞体miRNAのオミクス(miRomics)解析を行い、同培養系で発現している159種のmiRNAのうち、miR-134、720を含む7種のmiRNAが細胞体に比べて軸索により蓄積していることを明らかにした。この結果から、miRNAは細胞体から軸索に能動輸送により輸送され蓄積している事が示唆される。さらに軸索・成長円錐における局在を可視化するために、現在蛍光in situ hybridization法(FISH)法を用いて解析しつつある。
2: おおむね順調に進展している
新規培養法「ニューロンボール法」の開発に成功し、miRNAのオミクス解析ができることが示された。今回同定された軸索miRNAの役割を今後検討していく予定である。
おおむね計画通りに振興しているので、現在のところ研究計画を変更する予定はない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
J. Neurosci
巻: 31 ページ: 1773-1779
DOI:10.1523/JNEUROSCI.5337-10.2011
Mol. Brain
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DOI:10.1186/1756-6606-4-40