研究課題/領域番号 |
22500337
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
居原 秀 大阪府立大学, 理学系研究科, 准教授 (60254447)
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キーワード | 一酸化窒素 / 活性酸素 / 一酸化窒素合成酵素 / 8-ニトロcGMP / MPP^+神経毒性 / NO-ROSシグナル / H-Ras / MAPキナーゼ |
研究概要 |
これまで活性酸素種(ROS)は毒性物質であると考えられてきたが、近年、ROSが単なる毒性因子ではなく生理的なシグナル伝達物質であることが明らかとなってきた。一酸化窒素合成酵素(NOS)は、生体内多機能分子である一酸化窒素(NO)を合成するだけでなく、活性酸素種(ROS)も産生する。しかしNOSが産生するROSとNOとのクロストークを含めたシグナル伝達機構、生理・病理的作用については不明な点が多い。本研究では、神経系NOS(nNOS)由来NO-ROSのシグナル伝達機構、生理・病理的作用について解析することを目的としている。 2010年度、ROS産生能の異なるNOSスプライシング変異体恒常発現細胞を用いて、神経毒である1-methyl-4-phenylpyridinium (MPP^+)処理することによって細胞内にNOS由来のROSに依存して8-ニトロcGMPが産生されることを明らかにした。2011年度には、nNOS恒常発現細胞においてMPP^+神経毒性が強まることを見出した。また、このnNOSに依存した毒性増悪効果は、nNOS由来のROSが関与していた。最近、申請者らは、心筋細胞において、8-ニトロcGMPが、H-RasをS-グアニル化し活性化することによって、Rafを介してMAPキナーゼカスケードを活性化し、細胞死へと導く新たな情報伝達経路を見出した。この新たな「8-ニトロcGMP→H-Ras→MAPキナーゼカスケード→細胞死」は、nNOS発現PC12細胞におけるMPP^+神経毒性の増悪効果にも関与していると考えられる。 本研究での成果は、脳梗塞、パーキンソン病、アルツハイマー病などの様々な神経変性疾患における分子メカニズム解明の一助となり、将来的的な予防対策・治療戦略を確立する上でも重要である。NO-ROSシグナル伝達機構の統合的理解は、基礎生物学、医学生物学を含めた生命科学の幅広い分野における学術展開に資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り「シグナル伝達機構の解明」、「生理・病理学的作用の解明」を行ってきた。おおむね順調に進展しており、これまでの成果はすでに論文発表、学会発表を行っている。 モデル細胞の構築、測定系の確立、抗体の用意などの準備が十分にできていたためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
NO-ROSシグナルの「生理・病理学的作用の解明」を行うに当り、本研究ではMPP^+神経毒性に注目し、毒性増悪効果における「8-ニトロcGMP→H-Ras→MAPキナーゼカスケード→細胞死」を解析する予定である。経略の活性化をウェスタンブロット法、プルダウンアッセイ法などを用いて解析する。上記シグナル経路の解析はすでに心筋細胞で行っているので、技術的な問題点はない。
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