神経細胞にはシンタキシン(STX)の2つのアイソフォームSTX1A と STX1B が多く発現しており、同一の機能を有していると推測されている。しかしながら、STX1A 欠損マウスはほぼ正常なのに対し、STX1B 欠損マウスは致死であり、STX1B のヘテロマウスで高頻度に痙攣発作を認める。本研究ではこのような表現型の違いが見られる理由を検討し、STX1A とSTX1B の機能を明らかにするために行うものである。 (1) ペンチレンテトラゾル(PTZ)による痙攣誘発 STX1B ヘテロマウスで認められる PTZ による痙攣誘発の閾値の低下が他の開口放出関連蛋白質欠損マウスでも認められるか検討したが、STX1A、VAMP-2、SNAP-25 では正常マウスと差は認められなかった。興味深いことに、STX1A と STX1B両方のヘテロ欠損マウスでは、STXIBヘテロマウスと異なり痙攣誘発の閾値の低下は認められなかった。 (2) 痙攣発作に関与する脳領域の同定 痙攣発作直後の STX1B ヘテロマウスから脳組織を取り出し、抗リン酸化 Erk 抗体による免疫染色にて神経興奮が盛んに起きた部位の同定を試みた。その結果、海馬 CA3 領域、および扁桃体に強い陽性細胞が認められ、この領域の神経細胞興奮の増加が示唆された。 (3) Munc18 との相互作用 STX1B 欠損マウスでMunc18の量が減少していることについて検討するため、in vitro での解析を行っている。株細胞にMunc18 を発現させた際に STX1A または STX1B が共存する場合、蛋白質の安定性が変化するかどうか解析中である。 (4) Yeast Two Hybrid を用いた解析 STX1A およびSTX1B と結合する蛋白質に違いがないか検討するためYeast Two Hybrid を用いた解析を遂行中である。
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