研究課題/領域番号 |
22500341
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
小林 正明 東邦大学, 医学部, 講師 (70246693)
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キーワード | ヒポカルシン / ストレス応答 / 神経細胞死 / mixed lineage kinase / カルシウムシグナリング |
研究概要 |
申請者らは、海馬および大脳皮質に特徴的に発現するカルシウム結合タンパク質;ヒポカルシン(Hpca)を見出し、神経細胞内でのカルシウムシグナリング調節機構について解析してきた。その過程で、yeast two-hybridシステムを用い、HpcaがSAPKカスケードのMAP-KKKとして機能するmixed lineage kinase(MLK)3の結合蛋白質であり、活性を抑制することを見出し、HpcaがSAPKカスケードに対する抑止因子であるという仮説を検証中である。本年度は、MLK3とヒポカルシンの結合性ならびに酵素活性への作用について詳細に検討した。領域ごとに作製したGSK-MLK3融合蛋白質と、GSTおよびMBPヒポカルシン融合蛋白質を用い、in vitroでの相互作用を検討した。ヒポカルシンはMLK3のC-末端近傍(Pro/Ser/Thr-richregion上流域)と結合することが明らかとなった。また、ヒポカルシン欠損マウスの海馬ではresting stateにおけるMLK3の活性亢進が認められた。ヒポカルシン欠損マウスにカイニン酸を腹腔内投与した場合、誘導されるMLK3の活性化に亢進が認められ、Cresyl violet染色陽性およびTUNEL染色陽性の神経細胞死の亢進を認めた。以上の結果から、ヒポカルシンは神経細胞内でMLK3を介するストレス応答性の細胞死実行経路を抑制し、神経細胞の生存・維持に関与すると考えられる。 また、アルツハイマー病モデル動物であるアミロイドAβ沈着マウスでヒポカルシンの発現を欠損した場合、アミロイドAβの沈着亢進を認めた。以上の結果から、ヒポカルシンは神経細胞内でMLK3を介するストレス応答性の細胞死実行経路を抑制し、神経細胞の生存・維持に関与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルツハイマー病モデル動物(アミロイドAβ沈着マウス)でヒポカルシン欠損処理を行い、アミロイドAβの沈着亢進を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー病モデル動物を用い、ヒポカルシンがアミロイドAβの沈着に及ぼす作用を詳細に解析する。また、ヒポカルシン欠損培養神経細胞を用いてアミロイド毒性を定量化し、ヒポカルシンの神経保護作用を解析する。
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