研究課題
神経伝達物質であるドーパミンはぐドーパミン受容体をして運動や情動など多様な神経活動を制御している。また、パーキンソン病の病態と治療にも密接に関連する。主要なドーパミン受容体であるD1受容体(D1R)とD2受容体(D2R)は、脳の線条体で高い発現が見られ、運動制御に深く関わる。我々は、D1Rの役割を明らかにするため、ドキシサイクリン(Dox)投与による可逆的な発現抑制が可能なD1R遺伝子を、野生型、D1R単独欠損型、D1R/D2R二重欠損型の遺伝子背景を持つマウスに導入した。これらの遺伝子操作マウスでは、Dox投与前は、D1Rプロモーター制御のもと、導入D1Rが強発現していた。Doxを投与すると、2週間後には導入D1Rの線条体での発現が野生型マウスと同程度になっていた。そこで、D1R発現の増減による運動量の変化を調べた。4週間継続してDoxを投与し、D1Rの発現を低下させた場合、内在性D1Rを持たないD1R(-/-);D2R(+/+);Tg(+)およびD1R(-/-);D2R(-/-);Tg(+)マウスでは3週間目から運動量が低下したが、内在性D1Rを持つD1R(+/+);D2R(+/+);Tg(+)マウスでは低下しなかった。一方、Doxの投与を2週間で停止し、D1Rの発現を再上昇させると、内在性D1Rを持たないマウスでは、停止後約3日目をピークに運動量が一時過剰となり、停止後約1週間で投与前の運動量程度に回復した。内在性D1Rを持つマウスでは過剰運動は見られなかった。これらの結果から、1)D1Rは運動量の維持に必要であること、2)ただし、D1Rの発現量が減少しても、一定レベルに達するまでは運動量に影響を与えないこと、3)D1Rの発現量が一定量或いは一定時間低下した状態から増加することが過剰運動を引き起こすこと、4)D1R発現の増加量がマウスの過剰運動の発生と関連していることが示唆された。
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Endocrinology
巻: 151 ページ: 5893-5904
DOI:10.1210/en.2010-0915