研究概要 |
FTLDおよびALS患者脳に蓄積するTDP-43は,ユビキチン化,リン酸化,断片化といった翻訳後修飾を受けていることが応募者らにより明らかにされている。そこで,培養細胞を用いて,患者脳に蓄積するTDP-43の特徴を有する細胞内蓄積モデルの作製を試みた。核移行シグナルおよびその周辺の配列の欠損変異体を神経芽細胞SH-SY5Y細胞に発現させたところ,細胞内凝集体が形成された。またそれらの発現細胞にプロテアソーム阻害処理をした場合に,核内および細胞質にTDP-43陽性の凝集体が形成された。これらの予備的なモデルのさらなる至適化を現在行っている。 患者脳に特異的に蓄積するTDP-43の生化学的特徴の一つとして,~25 kDaのC末端断片の存在が示されている。このことは,全長よりもTDP-43断片の方が細胞内において凝集しやすいことを示唆する、これらの断片を患者脳より精製し,プロテオミクス解析を行い,その切断部位の同定を試みた。 その結果、219から始まる断片および247から始まる断片の2種類を同定することに成功した。 また,同定したこれらの断片を培養細胞に発現させたところ、断片の単独発現でも細胞内凝集体が形成できることを確認した。さらに、いくつかの断片とGFPとの融合タンパク質をそれぞれ単独で細胞に発現させると,一部の融合タンパク質において,リン酸化およびユビキチン化されたTDP-43断片の細胞内凝集体の出現を観察した。現在、これらの細胞内TDP-43凝集モデルを利用し、これらの凝集を抑制する化合物のスクリーニングを行っている。
|