研究概要 |
今年度は,TDP-43のC末端断片の意義について検討した。凝集性の高いC末端断片を細胞に一過性に発現させても顕著な細胞死は認められず,その細胞毒性は確認できなかった。また,この断片に家族性筋萎縮性側索硬化症患者から見いだされたTDP-43の変異を導入しても,その毒性は認められなかった。以上の結果より,TDP-43の凝集体形成による神経毒性というより,C末端断片による凝集体に全長TDP-43が巻き込まれることによるTDP-43の機能喪失による神経毒性の方が病態に関与している可能性も示唆された。 また,上記TDP-43のC末端断片による凝集体モデルを用いた,凝集体抑制効果のある化合物のスクリーニングを行った。市販の化合物ライブラリー(約1200種類)を用いて,GFPタグの付いたC末端断片による凝集体形成の阻害効果について,フローサイトメーターによる解析およびイムノブロット解析を行った。現在解析結果をまとめているところだが,数十種類の既存薬剤に阻害効果が認められており,今後更に詳細に解析を進める予定である。 さらにトランスジェニックマウスの作製についても進めている。現在,上記TDP-43のC末端断片を発現するマウスや種々の欠損変異体を発現するマウスを作製しており,解析を進めている。現在これらのマウスにおいて,運動機能の異常や脳や脊髄における異常TDP-43の蓄積は認められていない。まだ生後数ヶ月のものが多く,今後加齢に伴ってこれらの異常が出ることが期待されるので,解析を続けていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,主にトランスジェニックマウスの解析が中心となるため,マウスの加齢やその解析などに時間がかかることが予想されるが,現在はほぼ計画通りに飼育できている状況なので,当初の計画通りの解析結果が出るものと思われる。
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