研究課題/領域番号 |
22500351
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
恒成 隆 山形大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (30286439)
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キーワード | 感覚 / 嗅覚 / 微絨毛 / 情報変換 |
研究概要 |
嗅細胞のうち、それぞれの細胞先端部の構造が互いに異なる線毛嗅細胞と微絨毛嗅細胞は、異なった嗅覚情報変換機構を備えると考えられている。水棲動物のうちには水系の環境に接している嗅上皮においてこれら2タイプの嗅細胞両方をもつものが多い。本年度の研究では昨年度までのツメガエル、イモリを用いた記録系に加えて、(1)硬骨魚キンギョの嗅上皮スライス標本からのパッチクランプ記録系、(2)キンギョ魚体から分離させた嗅覚組織からのリンガー液中での嗅電図(electroolfactogram;EOG)を記録する実験系を初めて確立することができた。キンギョなどの硬骨魚の嗅細胞はアミノ酸などによく応答することが知られており、微絨毛嗅細胞からの記録がより効率的に行えることが期待される。実際に、(1)の記録系で全細胞記録時に蛍光色素を導入された嗅細胞に微絨毛嗅細胞様の形態をもつものが見られた。さらに、これまでは専ら真水環境下でのEOG記録が報告されていた淡水魚のEOGがリンガー液環塊で記録可能であることがわかったことにより、パッチクランプ記録での嗅応答データとEOG嗅応答データの相互比較が硬骨魚で可能となった。これにより、例えば、パッチクランプ記録にあたり、あらかじめEOGでどのような嗅物質や薬理学的試薬が数多くの嗅細胞に有効なのかを確認しておき、パッチクランプ記録では、実際に単一細胞からの応答を調べることで、細胞単位の応答特性を解析するなどのアプローチが、硬骨魚の嗅応答において新たに可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に新たにキンギョ嗅上皮スライス標本からのパッチクランプ記録系が初めて確立できたことによって、アミノ酸応答や胆汁酸応答を示す嗅細胞の形態が蛍光色素の導入により観察できてきているので。
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今後の研究の推進方策 |
今後はEOGによる嗅上皮に存在する嗅細胞集団からの嗅応答記録とパッチクランプ記録から得られる単一嗅細胞からの嗅応答解析を組み合わせて効率的に嗅応答解析を進めていく。具体的には嗅応答の細胞外イオン性などについてもEOGで調べることで、嗅細胞集団としての応答を解析し、個々の細胞での関与に関してはパッチクランプ法での解析を行っていくことを予定している。
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