研究概要 |
1.錐体細胞付随性グリア細胞のサブタイプを同定するために,注入したバイオサイチンに対する蛍光染色と,CNPase, NG2, S100β, Iba 1に対する抗体を用いた染色との二重染色を行った。その結果,NG2およびS100β 陰性であることは確認できた。一方,CNPaseについては5例中2例,Iba 1については,6例中2例で陽性の細胞がみられた。より明確な結果を得るためには,染色法を含め,今後さらなる検討が必要であると考えられた。ただし,Iba 1陽性細胞は,記録電極を近づける際に容易に動くことがわかったので,以下の記録・解析においては,Iba 1陽性を示す可能性の高いグリア細胞は実験対象から除外した。2.昨年度までの研究により,細胞体にグリア細胞が付随している錐体細胞の脱分極初期相における最大発火頻度が,付随していない錐体細胞に比べ有意に小さいことがわかった。今年度は,錐体細胞とそれに付随するグリア細胞より同時ホールセル記録を行い,付随性グリア細胞を脱分極させたときの錐体細胞発火に対する効果を調べた。その結果,付随性グリア細胞を脱分極させた場合,脱分極初期(脱分極開始~400 ms)では発火頻度がコントロールの108.3 ± 5.1% (n = 4) と有意に増大することがわかった。これに対し,グリア脱分極の後期(脱分極開始後400 msから800 ms)では,コントロールの101.2 ± 2.1% (n = 4) を示し,明らかな変化は認められなかった。これらの結果は,錐体細胞付随性グリア細胞が,特にその脱分極初期において,ニューロン活動を促進的に修飾しうることを示唆している。以上のことから,神経回路網の情報伝達におけるグリア細胞の新しい関与形態を直接的に記述することができた。
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