研究課題
Munc18は神経終末からの神経伝達物質放出を制御する重要な因子であるが、開口分泌過程における生理機能と作用機構については未だ不明な点が多い。近年、乳幼児期に発症する難治性てんかん「大田原症候群」患者において、ヒトunc-18(Munc18)遺伝子のエクソン内に点変異が同定され、Munc18変異とてんかん発症との関連が示唆されている(Saitsu et al.Nat Genet 2008)。本研究では、患者で同定されたMunc18変異を導入した線虫モデルを作成し、行動薬理学的解析および神経筋回路のカルシウムイメージング解析により興奮性・抑制性シナプスにおけるMunc18の生理機能と作用機構を明らかにするとともに、Munc18異常によるてんかん発症の分子機構の解明を目指す。平成22年度は研究実施計画に基づき以下の実験を行なった。大田原症候群の患者でヒトMunc18のエクソン内に4つのミスセンス変異(V84D,C180Y,M443R,G544D)が同定されている。C180YとG544Dは線虫のホモログ(unc-18)においても保存されており、それぞれの変異を持つ線虫トランスジェニック系統を作成した。これらの株をunc-18ヌル型変異体と交配し、てんかんモデルの遺伝子改変動物を確立した。次にアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に対する行動薬理学的解析を行なった。これらの遺伝子改変動物はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に対する感受性が野生型と比較して有意に低く、コリン作働性ニューロンにおける伝達物質分泌が阻害されていることが示唆された。現在蛍光カルシウムセンサーを発現する遺伝子改変動物を作成し、レーザー顕微鏡を用いた光学的測定法で定量的に筋神経活動を測定する系を確立している。
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