Buttner-Enneverらにより、サルにおける内直筋の運動神経核は3個に分かれて存在し、そのうちの1つのグループCは、内直筋の中でも外層(outer orbital layer)を形成する小さい筋線維を支配し、その筋繊維は、持続的活動に適した組織化学的な性質を有することから、輻輳運動に関与している可能性が示唆されている。これまでネコにおいて、内直筋自体、およびその支配神経にサルと同様の分化が存在するかどうかについては報告がないが、もし存在すれば、輻輳に関する神経経路の解析を進める上で、非常に重要な手がかりになり、その理解なしには、神経回路の同定はありえない。そこで本年度は、ネコにおいて、サルにおけるグループCに相当するものが存在するかどうかということについて解析を行った。内直筋の支配神経に、wheatgerm agglutinin-conjugated HRP(WGA-HRP)をとりこませると、動眼神経核内の外側部の、従来から内直筋亜核として知られる部位に標識ニューロンが認められる。それ以外に、サルで報告されているほど明瞭には区分されてはいないが、動眼神経核の背内側部にも逆行性に標識されたと考えられるニューロンが分布し、それらはグループCに相当するものと考えられた。これらのグループCに相当する運動ニューロンに投射するプレモーターニューロンへの入力系上丘からの投射について解析が進んでいる。
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