研究課題/領域番号 |
22500365
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
當瀬 規嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80192657)
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研究分担者 |
前田 佐知子 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80343391)
一瀬 信敏 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60448610)
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キーワード | 心臓 / 発生・分化 / カルシウムチャネル / 活動電位 / 蛍光色素 / 分子生物学 / 興奮収縮連関 / 生理学 |
研究概要 |
本研究は、「心臓はいつどのように動き出すのか?」という根本的な疑問の解明を目的としている。本年度は、心拍動が開始されるラット胎生10.00~10.15日目の心臓原基において、自発的かつ継続的な活動電位発生の引金を引く"キー電流"の責任タンパクの検索を分子生物学的に行った。RT-PCR法およびin-situハイブリダイゼーション法により、"キー電流"はα1Dサブユニットにより形成されるL型カルシウムチャネルのサブタイプであると考えられる。この研究の過程で心拍動開始時には、カルシウムトランジェントの開始が、心筋収縮の開始に先行することが明らかとなった。このタイミングのズレは、収縮タンパクが未成熟であることが関係していると考えられたので、心拍動開始時期の収縮タンパクの変化について、引き続きRT-PCR法とin-situハイブリダイゼーション法により検討をくわえた。この研究により、心拍動開始時期のトロポニンIは胎児型として報告されていたサブタイプのみが発現し、成体型は全く発現していないことが分かった。これがカルシウムトランジェント開始と心拍動開始のズレの原因となる可能性が考えられた。一方、膜電位感受性蛍光色素を用いた心臓発生領域全体の電気生理学的検討を計画し、これによりα1Dサブユニットと興奮発生との関連を明らかにすることにしたが、カルシウム蛍光色素と膜電位感受性色素の同時測定をするための蛍光指示薬負荷の条件設定が困難であった。そこで、今後は心拍動開始直後の心筋細胞のパッチクランプを行い膜電流を直接測定し、選択的阻害薬を用いてチャネルが機能していることを示す計画を先行させる予定である。これにより、α1Dサブユニットにより形成されるL型カルシウムチャネルが心拍動開始のキーであることを証明できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のうち、電位感受性蛍光色素を用いた研究は困難になっているが、同時に計画したパッチクランプ法を用いることで、克服できる見通しである。また、分子生物学的検討の途上に、収縮タンパクにおける新たな知見を見いだしたことなどから、「心拍動開始機構の解明」という研究目的に対しては確実に前進していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
心臓発生領域に完全に限定した分子生物学的検討を遂行するために、新たに微量ウエスタンブロット法を用いて、遺伝子だけでなく、タンパク分子の側面からα1Dサブユニットにより形成されるL型カルシウムチャネルの意義を明らかにすることにした。また、このチャネル選択的な阻害薬が見いだされたことから、より簡便で確実な方法により研究を遂行できる状況となった。
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