研究概要 |
立ち上がりの鋭い徐々に減衰していく自然音を条件刺激(CS)、餌を強化因子としてモルモットを訓練した。その後訓練により動物の脳がどのような変化(可塑性)を示したかを膜電位感受性色素を用いて調べた。実験は分担者である豊橋科学技術大学堀川研究室に出向いて主に行なった。訓練群ではCS音により特定の反応行動が生じたが、対照ナイーブ動物群では生じなかった。しかし両群においてCSによる聴覚皮質活動の度合いをイメージングしても明瞭な差を見いださなかった。しかし可塑性により確実に神経回路に何らかの変化が生じていると想定し、CSと周波数成分は同じであるが、時間経過の逆転する音(R音)を刺激音として、回路の特性変化をより多面的に調べた。その結果R音では両群とも反応行動は起こらなかったが、対照群に比べ訓練群でより顕著に活動パターンの減少が見いだされた(H25年度の結果)。本年度はR音でなぜ皮質活動が減弱したかを、逆転音を時間軸に沿って3等分して、それぞれの成分がどのような活動を引き起こすかを調べた。その結果、順行CS音の立ち上がり部分(ON)およびその逆転したものどちらでも強い皮質活動が生じる事、減衰部分は逆転すると皮質活動を強く抑制すること、従ってR音では最初にこの減衰部が刺激となるため、その後にくるCS音の立ち上がりに相当する部分により生じる強い活動が、抑制されることが判明した。このことは訓練、対照群ともに共通の現象であったことから、H25年度の結果を考慮すると、訓練により抑制回路の活性が増強されたと推定した。なお結果は国際学会(ARO;San Diego, USA, 2014.2.24)、UCSFでのセミナー(Center for Integrative Neuroscience, San Francisco, USA, 2014.2.27)にて発表した。
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