霊長類内側側頭葉記憶システムの時空間的な神経活動を、光遺伝学手法と多チャンネル皮質脳波(ECoG)記録法とを組み合わせて解析することを目指した。 予備実験としてラット視覚野にウイルスベクターによってチャネル・ロドプシンを発現させ、光刺激とECoG電極による記録を同時に行うことに成功した。この結果、光刺激の周波数を上げることによって、最高140Hz程度までの皮質脳波を誘導できること、また皮質上の一点を光刺激したとき、誘導される皮質脳波の時空間的な伝播パターンを解析することに成功した。以上の結果を学会発表し、さらに論文発表を準備中である。 また、サルにおけるECoG記録において大きな進展が得られた。128チャネルのECoG電極をニホンザルの内側側頭葉に慢性留置し、図形の対連合記憶課題を行う間のECoG記録に成功した。手がかり刺激(cue)呈示期間に視覚性のECoG応答が複数のチャネルにおいて得られ、このcue-related応答の中には、図形の対連合に有意な選択性を持つものが見られた。また遅延期間には限局したチャネルにおいてガンマ帯域のパワーが漸増し、かつ局所のシータ波とcross-frequency couplingを示すことを見出した。この他に複数の新たな知見が得られたので、学会及び論文発表を準備中である。
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