研究課題/領域番号 |
22500375
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高島 一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究グループ長 (90357351)
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キーワード | 膜電位イメージング / 体性感覚野 / バレル皮質 / 触知覚 / 電気刺激 |
研究概要 |
ラット一次体性感覚野バレル皮質には、1本1本の頬ヒゲに対応する体部位の局在的再現がある。膜電位イメージング手法を用いれば、ラットの個々の頬ヒゲに順次感覚入力を与えた際、バレル皮質全体に惹起される神経興奮応答を可視化することができる。この際、頬ヒゲへの刺激の方向や速度により、バレル皮質には特徴的な応答の時空間応答パターンが画像化され、これは生体が受容した感覚情報の皮質表現そのものであると考えられる。本研究課題の目的は、このバレル皮質の神経興奮活動の時空間パターンを、脳への直接電気刺激により再現することにある。脳への電気刺激パラメータを適切に制御し、脳に情報を正確に入力する基盤技術を確立できれば、将来的には、感覚入力型のブレインマシンインターフェースの実現等に資することができる。本年度は、バレル皮質内の1皮質カラムに対する電気刺激を行い、惹起された皮質応答のイメージング解析を行った。刺激電極は皮質IV層を中心に4~8チャンネル程度を想定し、単一電極を用い脳への刺入深さを50umずつ変化させてイメージングを行った。本実験の結果、観測される皮質応答の大きさや近傍への広がりを制御するには、刺激点の深さではなく、刺激強度の制御が重要かつ容易であることが明らかとなった。この結果は多点刺激電極を用いた場合にも同様であった。この結果を受け、1バレル皮質に1電極を留置、また、最終的には行動実験を通して触知覚の再生を確認したいことから、脳表上に刺激電極を置く方針を決定し、次年度の実験計画を進める。また、膜電位イメージング結果の解析と計算機シミュレーションから、600um離れた2~3点の電気刺激により触知覚方向の再生が可能、触速度も400um離れた3点以上の電気刺激で可能という見通しが得られたため、次年度の実験計画の指針とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1皮質カラムの多層刺激制御だけでは、複雑な応答の時空間パターンを誘導できなかったことから、当初の研究計画よりやや遅れていると自己評価する。しかし、これは実験を進めて判明したことであり、本結果を受けて、1バレル皮質に1電極のみを留置するという方針を決定できたため、最終年度の実験計画が進め易くなったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験結果を踏まえ、1バレル皮質に1電極を留置、また、脳表上に刺激電極を置く方針で今後の研究を推進する。これまでの解析とシミュレーション結果に基づき、400um間隔の3電極刺激を基本指針として、触刺激方向・速度の皮質応答表現の再現を試みる。
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