ヒトはより多くのことを知りたいという欲求、すなわち情報を求める欲求をもっている。 この欲求は多くの高次思考過程を駆動する原動力の一つとなっている。したがって、この欲求を生じる脳内神経機構が解明できれば、それを突破口として高次思考過程の解明への新たな道を開くことができる。より多くの情報を求める欲求機構解明の第一歩として、本研究では、情報の多い少ない、すなわち情報の量を計算する脳内神経機構に焦点を絞り、その解明を目的とする。これまで心理学や情報理論の分野で情報量の研究が多くなされてきた。しかし、脳内の情報量計算の神経機構を具体的に明らかにした研究はまだない。本研究はニホンザルの前頭前野から単一神経細胞の活動を記録し、この神経機構を解明することを目的とする。特に、先行研究で呈示されている3つの情報量の定義(正解確率増加分、認識確率変化量、Shannon情報量)のうちのどれが脳内神経活動と整合性をもつかを検証する。サルの神経系がこれら3つの情報量定義のどれを用いているかによって神経活動に差異の生じるように、サルの行動課題を設計した。22年度はこの課題でのサルへの視覚刺激呈示装置を作成し、サルがその課題を遂行できるか調べる予備実験を行った。その結果、当初の計画で設計して課題はニホンザルには遂行できないことが分かり、遂行可能な課題を模索するために研究期間の延長が必要になった。約4ヶ月の延長の後、上記の3つの情報量定義を仮定した場合に神経活動が異なることが予測され、かつサルに遂行可能な行動課題を考案できた。
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