向社会行動の生後発達に関わる神経機構を明らかにするため、ヒト以外の霊長類のなかでも協調性が高い社会性をもつコモンマーモセットを用いた実験的研究を行った。本年度は以下の項目を実施した。 1.向社会行動の定量的評価方法の確立 向社会行動評価のためのオペラント課題は、トレーを引いても自らは報酬を得られないがレシピエント側では報酬をえられる実験装置内で、レシピエント側分室にケージメートがいる状況(WP:with partner)といない状況(WOP:without partner)でテストを行う。WP条件ではWOP条件よりも有意に反応回数が多かった。WP条件とWOP条件における反応回数の差異を、各個体の向社会行動の指標とした。 2.非侵襲的イメージング技術(陽電子断層撮影:PET)による脳機能イメージング 動物用microPETスキャナーを用いて無麻酔マーモセットPET実験を行った(成獣、オス8頭)。セロトニントランスポーター結合実験には、特異的PETトレーサーとして[(11)C]DASBを用いた。動態解析モデル(MRTM2)を用いてbinding potential(BP)画像を算出したのち、向社会行動の個体差との関連について画像統計解析を行った。向社会行動の高発現と関連するセロトニントランスポーター結合部位は内側前頭前野および島皮質に認められた。また、[(18)F]FDGを用いた脳代謝活性実験では、15時間のアイソレーションの後ケージメート(あるいは非ケージメート)が隣接する状況と単独で置かれる状況での脳代謝活性を測定した。行動観察を同時に行い、同種他個体認識に関わる脳回路について統計解析を遂行中である。
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