研究課題/領域番号 |
22500379
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
横山 ちひろ 独立行政法人理化学研究所, 分子プローブ機能評価研究チーム, 研究員 (90264754)
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キーワード | 向社会行動 / コモンマーモセット / 陽電子断層撮影(PET) / セロトニントランスポーター / 背内側前頭皮質 / 前帯状回 / 後帯状回 |
研究概要 |
向社会行動の生後発達に関わる神経機構を明らかにするため、ヒト以外の霊長類のなかでも協調性が高い社会性をもつコモンマーモセットを用いた実験的研究を行った。本年度は以下の項目を実施した。 1.向社会行動の定量的評価方法の開発 向社会行動評価めためのオペラント課題は、反応(response)しても自らは報酬(reward)を得られないがレシピエント側では報酬をえられる実験装置内で、レシピエント側分室にケージメートがいる状況(WP:with partner)といない状況(WOP:without partner)でテストを行う。本年度はレバーと給餌器をつなげたPC制御タスク装置を開発し、トレーニングを開始した。 2.セロトニン神経系と社会行動との関連:PETによる脳機能イメージング 動物用microPETスキャナーを用いてセロトニントランスポーター特異的PETトレーサーとして[(11)C]DASBによる無麻酔マーモセットPET実験を行った。社会行動の評価は、上記オペラント課題とは別に、新奇他個体との遭遇場面で発現する行動の因子分析によって得られた、攻撃的態度、友好的態度、不安関連行動の3指標の因子得点を用いた。3指標と関連するセロトニントランスポーター結合部位はそれぞれ後帯状回、背内側前頭皮質、前帯状回に認められた。また、[(18)F]FDGを用いた脳代謝活性実験では、ケージメート(あるいは非ケージメート)が隣接する状況と単独で置かれる状況での脳代謝活性を統計解析した結果、後帯状回が社会的情報処理に中心的な役割を示すことがわかった。 3.早期養育環境の違いによる社会行動発現の差異 人工哺育および親哺育の個体を準備し、対個体行動の行動評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
向社会行動の定量的評価方法の開発については、レバー反応を利用したPC制御タスクの開発に手間取った。新奇他個体との遭遇実験で得られた行動指標をもちいて、PET実験結果([(11)C]DASBおよび[(18)F]FDG)との関連性が明らかになった。また早期養育環境の違いによるモデル動物の作成に成功しその社会行動評価を追加していることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに向社会行動指標について評価方法を確立し、セロトニントランスポーターに加えてセロトニン2a受容体の結合活性との関連を調査する予定である。オピエート受容体に関しては、[(11)C]Carfentanilの高親和性によりトレーサー量が薬効量ときわめて近いことがわかったため、現在[(18)F]Carfentanilの製造にむけて準備をすすめている。早期養育環境によるモデル動物だけでなく、社会的情報処理に中心的役割を示す部位をターゲットにセロトニン作動薬や拮抗薬の投与、さらには遺伝子導入ウイルスベクターを投与する生物学的介入モデルの開発を目指す。
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