センダイウイルスはマウスに肺炎を起こす病原体で、実験用マウスコロニーでは最も感染事故の多い病原体の一つである。従来より、マウス系統により感染抵抗性/感受性が異なることが知られていたが、我々は抵抗性及び感受性系統の代表格であるC57BL/6 (B6)及びDBA/2 (D2)系統を用い、両系統の交配により作製したバッククロス個体群を用いたquantitative trait locus (QTL)解析により、3つのQTLsの相互作用により両系統の抵抗性及び感受性の形質を説明できることを明らかにした。本研究はこれらQTLs中に存在する責任遺伝子を同定することを目的としている。 責任遺伝子同定のためには、まずB6及びD2マウス間で、これら領域(QTLs)を互いに単独に入れ替えたコンジェニックマウスを作製し、これらの領域(QTLs)の保有の仕方で抵抗性/感受性の表現型を再現できるかどうかを確認する必要がある。平成24年度は平成23年度に引き続きこれらの3つの領域(QTLs)をB6バックグランド及びD2バックグランドでそれぞれ単独に入れ替えた6系統、更にはepistatic interactionが見られた2つの領域を同時に有するB6、D2バックグランドの系統2系統、総計8系統のコンジェニック系統の作製を行い全ての系統の作製を終了することができた。これらのコンジェニックマウスにセンダイウイルスを実際に感染させ、抵抗性/感受性を測定したところ、QTL解析において単独でも有為な抵抗性を示したSeV1領域及びepistatic interactionを示したSeV2とSeV3はD2バックグランドにおいて抵抗性をもたらし、確かにこの領域に抵抗性/感受性遺伝子が存在することを証明できた。今後はこの領域から責任遺伝子を同定して行く予定である。
|