研究課題/領域番号 |
22500385
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
有泉 高史 玉川大学, 農学部, 教授 (30286166)
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研究分担者 |
高橋 秀治 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (90447318)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 発生工学 / 器官創製 / 膵臓 / 未分化細胞 / 生体移植 |
研究概要 |
1.異所性膵臓の組織学的・免疫組織化学的解析 試験管内で分化誘導した膵臓原基を初期胚に移植すると、移植した胚の腹部に二個目の膵臓(異所性膵臓)が形成される。本年度は、移植から1年が経過して成体(カエル)へと変態・成長した個体から異所性膵臓を摘出して、その形態的な特徴を組織学的および免疫組織化学的に解析した。異所性膵臓のヘマトキシリン・エオシン染色した組織切片では、正常な膵臓と同等の組織構造をもつ腺房やランゲルハンス島が観察された。電子顕微鏡による微細構造の観察では、ランゲルハンス島にA細胞やB細胞の存在が確認された。抗アミラーゼ抗体、抗インスリン抗体、抗グルカゴン抗体など、各種の抗体を用いた免疫組織化学的観察においても、各抗体に対して明らかに陽性を示す結果が得られた。以上の結果から、成体の体内に形成された異所性膵臓は組織学的・免疫組織化学的に正常な膵臓と同等であることが示された。 2.異所性膵臓の血糖調節能力の解析 試験管内で分化誘導され、生体移植によって成体(カエル)の体内に形成された異所性膵臓の機能を、血糖調節能力をもとに解析した。初めに、正常なカエルから膵臓を全摘して、高血糖状態のカエルを得た。次に、異所性膵臓をもつカエルから宿主の膵臓のみを摘出して、血糖値の変化を経時的に記録した。その結果、後者のカエルは高血糖状態にならず、血糖値をほぼ正常値に保っていることが明らかになった。これは、体内に残された異所性膵臓が正常な膵臓と同等の血糖調節能力を有することを示している。以上の結果から、異所性膵臓は少なくとも血糖調節においては正常な膵臓と同レベルで機能する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の交付申請書には、1)異所性膵臓の組織学的・免疫組織化学的解析と2)異所性膵臓の血糖調節能力の解析、の2点を研究目的に掲げた。本年度の実験と解析により、異所性膵臓には構造的にも機能的にも正常膵臓と同等の腺房やランゲルハンス島の組織分化が認められた。また、膵臓摘出実験と血糖値測定の結果から異所性膵臓の血糖調節能力も確認されており、研究は当初の目的にしたがって概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、1)アフリカツメガエル胚の未分化細胞から膵臓を分化誘導する実験系の確立、2)遺伝子発現における正常な膵臓発生との共通性の確認、3)試験管内で分化誘導した膵臓の移植方法の確立、4)異所性膵臓の臓器レベルの形態分化の確認、5)異所性膵臓の血糖調節能力の解析、をおもな目的として解析を行ってきた。本年度までの研究により、ほぼすべての目的が達成され論文発表の準備が整いつつある。今後は5)についてさらに詳細なデータを集めるとともに、研究代表者が中心となってこれまでの研究成果をまとめて学術論文として発表する。
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