研究概要 |
本研究では、HIV感染の動物モデルであるSIV感染サルを用い、SIV感染によって誘導される抗体の解析を行う。これによってエイズ発症やウイルス排除における抗体の役割をあきらかにし、安全なワクチンや治療薬の開発を目指す。本年度は、ファージ・ディスプレイ法によってアカゲザルからモノクローナル抗体を分離する系の確立と、SIV特異的抗体の分離を行った。 アカゲザルからファージ・ディスプレイ法によってモノクローナル抗体を分離するため、アカゲザルの抗体遺伝子のシーケンス解析とデータベース上のアカゲザル抗体遺伝子のデータを基に新たなプライマーを作製した。複数のアカゲザルのcDNAを鋳型としたPCRの結果、新たに作製したプライマーがアカゲザルの抗体遺伝子を効率よく増幅することが示された。次に、得られたPCR産物を用いて抗体のFabを発現するファージ・ライブラリを構築し、SIVに特異的な抗体を選び出すためのパンニングを行った。この結果、SIVのgp120,gp41,p27に対する多数のモノクローナル抗体を得た。シーケンス解析の結果、得られた抗体は遺伝的にも多様であり、アカゲザル用に改変して構築したファージ・ライブラリが、十分な多様性を持っていることが示された。また、抗gp120抗体には強いSIV中和活性が認められた。 これらの結果は、アカゲザルからファージ・ディスプレイ法によって抗体を分離する系が確立され、有用な抗体が分離できることを示している。
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