研究課題/領域番号 |
22500387
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
桑田 岳夫 熊本大学, エイズ学研究センター, 助教 (70346063)
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キーワード | モノクローナル抗体 / アカゲザル / HIV / SIV |
研究概要 |
本研究では、安全なワクチンや治療薬の開発を目指し、HIV感染の動物モデルであるSIV感染サルで誘導される抗体の解析を行っている。本年度は、ファージ・ディスプレイ法によってSIV感染サルからリン脂質、dsDNAに対するモノクローナルFab抗体を分離した。また、Fab抗体の完全抗体分子への変換を行った。 SIV感染サルで上昇が認められていたリン脂質、dsDNAに対する自己抗体を分離するため、リン脂質、dsDNAを吸着させたELISAプレートを用い、SIV感染サルから作製した抗体発現ファージ・ライブラリから、リン脂質、dsDNAに結合する抗体を選び出した。遺伝子解析の結果、使用されている抗体遺伝子やCDRH3の長さなどの特徴が、抗SIV抗体とは異なっており、両者が遺伝的に異なる起源をもっていることが示された。 昨年度に作製した抗SIV中和抗体、B404を完全抗体分子へ変換するため、アカゲザルのIgG1重鎖遺伝子全長をPCRで増幅し、哺乳細胞用の発現ベクターに組み込んで、B404重鎖可変部位を挿入した。同様に、B404軽鎖遺伝子を哺乳細胞用の発現プラスミドに組み込み、これらの2つのプラスミドを293A細胞へ遺伝子導入して、完全な抗体分子を産生する細胞株を樹立した。産生されたIgG-B404は、Fab-B404と同等か、それ以上の結合活性と中和活性を示した。 これらの結果は、SIV感染サルにおける自己抗体の誘導が、SIVとの交叉反応によるものではないことを示唆している。また、FabからIgGへの変換系が確立された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファージ・ディスプレイ法による自己抗体の分離と、FabからIgGへの変換という、当初の計画を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
将来的にサル感染実験によって検証することを考えて、SIV感染サルにおける抗体の解析を行っているが、より臨床的な意義を高めるため、HIV-1感染患者における自己抗体の解析も行っていきたい。
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