致死量の放射線を照射したマウスにgreen fluorescent protein (GFP)陽性の骨髄細胞を注射しておく(BMTマウス)とそのマウスの臓器は再生する。腸や脾臓のみに放射線を照射し、骨髄細胞を注射してBMTマウスとしても骨髄細胞は腸や脾臓には進入しない。対照として腸のみを鉛板でシールして放射線を照射し、BMTマウスを作成したときは腸にもドナー由来の骨髄細胞は進入した。これは移植した骨髄細胞はまず骨髄に入り、その後末梢に出て個々の臓器の再生に関与していることが明かとなった。これまで胃腸の上皮細胞が骨髄細胞で再生されるという報告がなされていたが、我々の検索ではドナー骨髄細胞由来の上皮細胞は観察されなかった。上皮細胞の形態と機能は間質によりコントロールされている。BMTマウスおいて間質部位にリンパ球でないドナー由来間質細胞の出現が短時間になされる。これはドナー由来の間質細胞が上皮の再生を促し、臓器の形態と機能の維持に重要な役割を負っていることを示している。ドナー由来の間質細胞は処置後24時間で個々の臓器に表れるが、ドナー由来のリンパ球が末梢に出現するのは間質細胞よりも数日遅れる。GFP陽性マウスと野生型マウスを併体結合をしておくと、脾臓では40%、骨髄では20%近くが相手方のリンパ球で置き換わる。野生型パートナーマウスの骨髄の中に進入してきたGFP陽性細胞をFACSで回収し、この細胞でBMTマウスの作成が可能であったことから、骨髄細胞は骨髄を出て、再び骨髄に帰ることをしていることが明らかとなった。また野生型パートナーマウスの個々の臓器ではリンパ球でないGFP陽性の細胞が確認できた。骨髄細胞は骨髄に帰ったり、色んな臓器に侵入するための特殊な「キイ」を持ちあわせていることが示唆された。
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