Ali18変異マウス系統では、関節を含む四肢末端部に炎症性の発赤と腫脹が発生する。現在までに、positional candidate cloningによって候補領域内のリン酸化酵素の触媒部位にミスセンス変異が検出された。現在までにこの遺伝子が関節炎に関与するという報告はなく、炎症発生の細胞動態や分子メカニズムは未知のままである。本研究では、Ali18変異の炎症発症機構を分子レベル、細胞レベル、個体レベルで総合的に理解して治療薬開発などの応用へと結び付けることを目的とした。本年度は、分子レベルの解析において野生型とAli18変異タンパクのリン酸化活性の比較を行った。哺乳類培養細胞における発現ベクターに、野生型およびAli18変異を含むの目的タンパクの全長のPCRクローニングを行った。挿入部はシーケンシングにより確認した。この発現ベクターをNIH3T3細胞にトランスフェクションし、リン酸化活性の比較を行った。トランスフェクションを行っていない細胞では目的のリン酸化活性は検出されなかったが、導入細胞ではリン酸化活性が検出された。しかし、野生型と変異タンパクの間では大きなリン酸化活性の変化は認められなかった。また、この原因遺伝子が発現する骨髄よりタンパクを調整して、野生型と変異マウスでの活性を比較したが大きな差は認められなかった。現在、タグ付きタンパクの精製を行っており、これによりさらに精度を高くして活性測定を行う予定である。細胞レベルでの解析では、マスト細胞を欠損するW/W^vマウスとの交配で関節炎が全く発症しないことが明らかになった。そこで、変異マウスよりマスト細胞を培養して解析を行っている。また、個体レベルの解析では、原因遺伝子座のBACクローンを解析中である。前述の発現ベクターに挿入したコンストラクトでのトランスジェニックマウス作製についても検討を行っている。
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