研究概要 |
本研究の目的は,生殖細胞の最適な凍結法を解明するために,近赤外分光イメージングにより耐凍剤の相変化,氷結晶の計測法を開発し,この手法により耐凍剤の相変化および氷結晶の3次元構造に基づき生殖細胞の最適凍結保存法を解析することにある.本年度は,近赤外分光イメージングによるエチレングリコール(Ethylene Glycol:EG)水溶液の可視化手法を確立した.具体的には,近赤外分光法によりEGの濃度を0~100wt%まで変化(10wt%濃度差)させ,EGの吸収波長帯を計測した.その吸収波長帯は,1400~1600nmであり,EGOwt%(水)の吸光ピークは1460nmで,EG100wt%(EG)の吸光ピークは1480nmであった.近赤外域における光の吸収は,分子構造の官能基の違い,また,同じ官能基でもその温度環境の違いにより異なる波長で起こる.このため,今年度新規で購入した顕微鏡用の冷却加熱ステージによりEG水溶液の温度をコントロールしながら,EG水溶液の濃度差における分光画像(1480nm)を取得した.得られた分光画像における水の輝度(256階調)は68であり,EGの濃度が濃くなるにつれ輝度が高くなり,EGの輝度は195であった.近赤外分光法によるEG濃度差の吸光度と,近赤外分光イメージングによる分光画像の輝度との間には,反比例関係があった. 以上により,今年度確立した近赤外分光イメージング法によるEG水溶液計測手法は,耐凍剤の相変化および卵巣組織内氷結晶の計測,耐凍剤の挙動および卵細胞内氷結晶構造・細胞組織の3次元計測に応用されるツールとして大きな意義がある.
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