本研究はマウス・亜種間コンソミック(染色体置換)系統を使用して、成体における褐色脂肪組織の活性を熱産生・脂肪蓄積などエネルギー代謝関連表現型の観察を通じて測定し、関連遺伝子群を染色体上にマップし、交配やトランスジェネシスを通じて、それらの相加的効果、相乗的効果も含めた遺伝子間相互作用を全ゲノムレベルで解析することを目的としている。本年度は、褐色脂肪組織の活性を評価するための新たな表現型を観察するという側面から、数種類のコンソミック系統について高脂肪食摂餌を与え表現型収集を行った。遺伝的背景となっているB6系統は数週間の高脂肪食付加により、褐色脂肪部位の量が増加し褐色脂肪中に白色脂肪滴が観察されるようになるが、コンソミック系統の中にはB6系統に比べて、その量にバリエーションが存在した。いくつかの染色体置換系統については、この量の差を指標にして遺伝的背景となっているB6系統との連鎖解析を行った。全ゲノムを対象とした褐色脂肪組織の遺伝子発現解析と系統差の検索を行うためのパイロット実験として、全コンソミック系統の褐色脂肪蓄積に関するデータを収集した。成体動物の組織学的観察についても行い、コンソミック系統の褐色脂肪組織に脂肪蓄積が起因となると考えられる形態差を観察した。この形態差に関わる遺伝子を探索するため、次年度はエネルギー代謝に関連した数種の遺伝子について発現解析を行い、全体的な発現変動遺伝子を行うコンソミック系統の抽出に繋げる。特にエネルギー産生に大きくかかわるミトコンドリアの活性に関わる遺伝子に注目する。
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