研究課題
本研究は日本産野生由来マウス系統であるMSM/Ms(Mus musculus molssinus)を基盤とした亜種間コンソミック(染色体置換)系統を使用して、特に成体における褐色脂肪組織の活性状態を個体の脂肪蓄積などのエネルギー代謝関連表現型の観察を通じて検討し、表現型の差に関連した遺伝子群を染色体上にマップ、交配やトランスジェネシスを通じて、それらの相加的効果、相乗的効果も含めた遺伝子間相互作用を全ゲノムレベルで解析することを目的としている。本年度は、褐色脂肪組織の活性状態を評価するための新たな表現型として、B6およびMSM、さらには全ゲノムを対象にしたコンソミック系統29種を含む計31系統の呼吸商や活動量、血糖値などの測定項目を新たに追加した。各系統はまずオス10週齢の個体を5匹以上測定することを目標とした。呼吸商についてはデータの解析をおこない、遺伝子探索に使用できるか否かを検討している。褐色脂肪に量的差異が観察されるいくつかの染色体置換系統については、これを指標にして遺伝的背景となっているB6系統との連鎖解析を引き続き行った。また、全ゲノムを対象とした褐色脂肪組織の遺伝子発現解析と系統差の検索を行うための試料として、全コンソミック系統の褐色脂肪蓄積に関するデータおよび遺伝子発現解析に供する試料をさらに収集した。上記に加えて、複数のコンソミック系統の交配から、褐色脂肪の活性に関する表現型を指標にした染色体間の相加的あるいは相乗的効果の探索についても前年度に引き続き検討した。
2: おおむね順調に進展している
B6およびMSM、さらには全ゲノムを対象にしたコンソミック系統の該当表現型収集が順調に進行している。遺伝子発現解析に必要な資料の採取も同様に進行している。コンソミック系統間の掛け合わせによる複数染色体効果の観察も開始した。
最終年度になるため、遺伝子発現解析について一定の集団を定量PCRなどで検証したい。また、遺伝子発現と表現型の相関関係をコンソミック系統の掛け合わせや知識ベースでの情報収集からの検討も合わせて行いたい。さらに検証動物のためのマウス作成を生殖工学的手法を用いて行いたい。これら全ての結果を総括して、当該課題についての考察を行う。
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