マウスC57BL/6J―MSM/Ms系統間の染色体置換により樹立した亜種間コンソミック系統や、これをもとに作成したサブコンソミック系統を対象にして、成体における褐色脂肪組織の活性状態を熱産生・脂肪蓄積などエネルギー代謝の量的形質として計測し、関連形質を制御する遺伝子群を染色体上にマップする。さらにゲノム多型情報を活用した連鎖解析やBACトランスジェネシスによる表現型模倣を指標に当該遺伝子群をクローニングし、それらの相互作用を遺伝子ネットワークとして明らかにする。この目的を遂行するため、コンソミック系統および両親系統のC57BL/6JおよびMSM/Msを対象にして、褐色脂肪組織の活性状態を検出するために適した表現型収集環境を検討し、高脂肪食付加による褐色脂肪組織の白色脂肪化抵抗性などのデータ収集をおこなった。これにより、高脂肪食付加で顕著に体重が増加する系統、あるいは抗肥満を示す系統を観察した。遺伝子発現については、10週齢時の個体の褐色脂肪のRNAを採取し、これを使用した。このサンプリングに使用した個体はエネルギー代謝関連の各種形質データについても取得した。コンソミック系統の遺伝的背景であるC57BL/6J系統と差違のある系統については、複数のコンソミック系統を対象にしてサブコンソミック系統の作製を行ない、各コンソミック系統について、複数の系統を得ることができた。また、褐色脂肪組織の蓄積量が増加する染色体の1種について、遺伝的背景となっているC57BL/6J 系統との連鎖解析とサブコンソミック系統の表現型を収集した。この系統についてはさらに、肥満に関連すると考えられるゲノム領域を保持するBACクローンを使用してBACトランスジェネシスを行った。
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