研究概要 |
本研究の目的は、ヒトで催奇形性を示すがげっ歯類では示さないサリドマイドの分子種差を詳細に明らかにすることであり、以って、その有効薬剤としての多標的性と安全性を両立した新規誘導物質の設計に寄与するとともに、現行のウサギなどを用いた催奇形性評価の近代化に資するものである。 このために、サリドマイドを経胎盤単回投与した際の胚肢芽について、網羅的に遺伝子発現変動を解析し、文献情報および先に実施した時間的・空間的な発現パターンの検討結果と照合し、候補シグナルネットワークを得る。次いで、当該ネットワークを変調させる化学物質を投与し、サリドマイド誘発奇形が生じないマウス胚にて奇形誘発実験を検討し、その妥当性を検証する。 平成22年度は計画通り、サリドマイド(0, 1,000mg/kg)を妊娠10日のマウス(C57BL/6CrSlc)に経胎盤単回投与(経口)し(溶媒:0.5%メチルセルロース)、経時的(投与2、8及び24時間後)に得られた胚後肢・肢芽RNAサンプル(1腹分をプールし1サンプルとした;各3例)についてGeneChip (Mouse Genome 430 2.0,Affymetrix社)を用いて網羅的に遺伝子発現変動を解析した。t-testでのP値が0.05未満且つどちらかの発現コピー数が0.2以上という条件下にて対照群と投与群とを比較し、発現変動が認められた遺伝子を抽出した。その結果、投与2、8及び24時間後についてそれぞれ、増加分は49、130及び1,779、減少分は110、26及び9プローブセット(ps)が見出された。現在各遺伝子について、その遺伝子欠失マウスの文献情報と照らし合わせつつ、その機能の妥当性並びに関係するシグナルネットワークの探索を検討している。
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