研究概要 |
本研究の目的は、ヒトで催奇形性を示すがげっ歯類では示さないサリドマイドの分子種差を詳細に明らかにすることであり、以って、その有効薬剤としての多標的性と安全性を両立した新規誘導物質の設計に寄与するとともに、現行のウサギなどを用いた催奇形性評価の近代化に資するものである。 このために、サリドマイドを経胎盤単回投与した際の胚肢芽について、網羅的に遺伝子発現変動を解析し、文献情報および先に実施した時間的・空間的な発現パターンの検討結果と照合し、候補シグナルネットワークを得る。次いで、当該ネットワークを変調させる化学物質を投与し、サリドマイド誘発奇形が生じないマウス胚にて奇形誘発実験を検討し、その妥当性を検証する。 平成23年度は、平成22年度に得られた、1,000mg/kgサリドマイドを経胎盤単回投与した際の胚後肢・肢芽(胎生10.5日)において発現変動を示した遺伝子(計2,103プローブセット[ps])について、その遺伝子欠失マウスの文献情報との照合,及びin silicoでのプロモーター解析を利用することにより、標的候補シグナルネットワークの絞り込みを検討した.あわせてこの検討結果と、肢芽形成以前の初期胚(胎生8.5日)の遺伝子発現変動解析から得た、発現変動遺伝子(計194ps)及び、独自に見いだしたサリドマイド催奇形に関係する候補分子(X遺伝子)のシグナルネットワークと比較・検討し、候補分子あるいは当該分子カスケードの絞り込み作業をおこなった。発現変動する機能未知の遺伝子が予想よりも多かった為、予定より絞り込み作業は遅れたが、別の解析ソフトを利用し、より高精度な解析により進捗することができた。
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