研究概要 |
最終年度では,ラット脳の組織活性の指標となるATP濃度とOCT(optical coherence tomography)との関係について知見を得るために,ラット脳の組織温度とOCTの信号強度との相関関係について,実験的に検討した。一般に,ATPは,生化学反応で生成され,細胞は恒常性を保つために,イオンの能動輸送が必要で,常時ATPを消費しなければならない。よって,組織内のATP濃度は,生成量と消費量とのバランスで決まる。ATPの産出量は,反応物質の供給と反応速度により,それぞれ,血流速度と組織温度に対応する。ラット脳の組織温度は,OCTの測定部位の近傍に微小な熱電対を埋め込んで測定した。組織温度の低下時は,ラットの胴体部を氷水入りのパッドで覆い,上昇時はパッドの代わりにシートヒーターを敷いて行った。頭部は,従来と同じように,麻酔下で開頭後,歯科用ドリルで厚さ140um程度に4mmx4mmの領域を研磨で薄くして測定領域とした。この状態で,4mmx4mm,深さ2.8mmまでの脳組織を400枚にわたって,三次元断層を測定し,これを温度を変えながら,10min間隔で570min間行った。組織温度では,29度から22度までを4周期繰り返した。この時,心電信号も同時に測定した。OCTの信号は,測定領域内である地点を決めて,測定時間ごとのそこでの強度プロファイルを求め,灰白質と白質に相当する深さでのOCT信号強度が,最初の測定の何倍多くくなったかを,相対信号強度(relative signal intenmsity, RSI)として求めた。さらに,RSIと組織温度,RSIと心拍数との関係から相関係数を求めた。RSIと組織温度との相関係数は,-0.42から-0.50,RSIと心拍数との相関係数は,-0.48から-0.64と求められた。
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