研究概要 |
本研究では、感覚情報関連の脳機能測定技術を確立するため、自然環境下で非侵襲的にかつ高精度に脳内電気活動を可視化(イメージング)することを目的とした.空間分解能を考慮した電極配置,電極数削減などによる計測技術の最適化を行うとともに、信号・雑音の統計情報を組み込んだ脳内等価ダイポールイメージングを適用することにより,自然環境下でも高精度測定を実現した.構築した脳電気活動イメージングシステムを用いて、体性感覚の刺激部位や、刺激量、刺激パターンの違いを、脳波から客観的にかつ定量的に把握する方法を確立した. 脳内電気活動分布を推定するにあたって,体性感覚野など注目部位を解剖学的な見地から設定し,注目部位以外の信号やノイズ,アーチファクトを雑音成分とみなし空間逆フィルタに雑音共分散行列として組み込むことで,注目信号の抽出が可能となった.これにより,複数信号が同時に存在する場合,ノイズやアーチファクトに埋もれている場合でも,信号の可視化が可能となった. 構築された脳機能ダイポールイメージングシステムにより、触覚刺激に応じた体性感覚野における「脳電位活動量」を解析した.触覚刺激装置を用い、手掌に刺激閾値の定数倍の感覚刺激を与えた.多チャンネル脳波計で計測された脳波データから、ダイポールイメージングにより空間分解能の高い脳内電気活動を推定した.脳内感覚野における活動部位、信号強度、ならびに潜時を高精度に計測した.左右の手指,足指と部位を変えた場合の脳内活性部位の違いを高空間分解能ダイポールイメージングで捉えることができた.刺激パターンを変化させた場合,事象関連電位P300の振幅に違いがみられることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内電気活動の非侵襲可視化技術を確立し,体性感覚誘発電位計測の基礎実験を実施し有効性を確認した.これらの成果は,国際会議,原著論文として発表しており,ほぼ予定通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとに,時空間的な脳電位変化の高精度計測を実現する.手掌及び手指に、触覚刺激装置にて接触点数を変化させ、「体性感覚-体性感覚マッチング課題」を行う.課題自身の遂行(ワーキングメモリやマッチング)に関与する前頭前野の領域にも注目し、時空間的な脳電位の変化を観測する.具体的な課題は、ある点数の刺激を被験者に一定期間接触させ、その点数、部位を記憶させる.さらに遅延期の後、異なった点数、部位の刺激を接触させる.そして前者と後者を比較させ、差異を回答させる.時空間解析では情報量が増大するが,過去の信号情報をうまく利用することで,効率的な可視化を実現する。
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