研究概要 |
本研究はこれまで比較的動きの少ない臓器に適用されてきた磁気共鳴画像化法(Magnetic Resonance Imaging, MRI)を組み合わせた集束超音波治療(Focused Ultrasound Surgery, FUS)の適用範囲を広げ,より有用な治療法としていくため,臓器の三次元的な呼吸性移動・変形に追従して集束超音波の照射位置を追尾,さらには照射位置の予測による集束超音波の照射制御手法の確立を目指すものである.今年度は特に以下の点について,検討を行った. (1)肝臓の三次元的呼吸性移動・変形の解明 呼吸による肝臓の三次元的な移動・変形のパターンを抽出するために,高速撮像法であるFIESTAを用いて,健常ボランティアの肝臓を三次元撮像した.撮像は最大吸気,最大呼気およびその中間での息止めによるマルチスライス画像を取得し,肝臓の血管の三次元再構成を行い,構造解析を行って樹状構造を構築した.さらに,1周期あたり20秒程度のゆっくりとした呼吸で,1呼吸サイクルで10セット程度のマルチスライスを取得し,横隔膜の位置や血管の位置などを元に,スライスごとに呼吸位相が滑らかに変化するように並べ替え,呼吸位相が滑らかに変化する三次元樹状構造,すなわち四次元モデルの構築を行い,これを可視化した.さらに,このモデルの分岐点の動きに注目し,呼吸位相にしたがって移動・変形する血管の三次元的な動きのパターンを解析した. (2)血管分岐に注目した肝臓三次元動態追尾 集束超音波治療の実施中には,照射位置の追尾に必要な撮像時間は限られるため,できるだけ少ない撮像枚数で,照射位置の追尾を行う必要がある.そこで,「(1)肝臓の三次元的呼吸性移動・変形の解明」で構築した樹状構造の解析結果をもとに,解析時と同様に1周期あたり20秒程の4枚のマルチスライスを撮像し,等方ボクセル化したポリュームデータより,血管分岐点およびそこから伸張する分枝血管と照射点の幾何学的位置関係に基づいた追尾手法について提案し、その妥当性を検討した.
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