研究概要 |
本研究の目的は,皮膚組織のマイクロメカニクス診断を実現課題とし,数マイクロの高分解能及び非侵襲診断能力を有する光干渉断層画像法(OCT)を多機能化し,組織内の歪み断層分布(OCSAシステム)と応力断層分布(OCSEシステム)を検出するマイクロ力学量断層検出システムと,含水量を断層検出する2C-OCMシステムのハイブリッド同時検出システムを構築することである.OCSAでは干渉信号スペックルの変形解析から歪み分布を,更に,OCSEでは偏光特性から光弾性解析を用いて応力分布を同時に断層計測する.2C-OCMでは、水分子の光吸収特性が異なる2波長帯OCTを用い,検出吸収係数から皮膚組織内の含水分布を断層計測する.そのため22年度では,第1到達目標である,偏光OCTと2波長帯OCT(2C-OCM)のハイブリッドシステムの構築を構築した,すなわち,「応力検出用の1300nm帯偏光OCTシステムの構築」と「1300nmと1400nmの波長帯を用いた2C-OCD含水率断層分布検出システムの構築」を実施し,両システムの検証を行った.偏光OCTシステムの検証は,PETフィルムの引張り荷重付加に発生する干渉稿のFFT解析を行い,荷重との相関関係を検討した.干渉稿の断層画像を用いた光弾性解析には,干渉稿画像解析アルゴリズムの再開発が必要であることが判明したため,最新の光弾性解析アルゴリズムの適用を23年度に行う計画を新たに考案した.2波長帯OCT(2C-OCM)は,散乱ナノ粒子を混入した蒸留水と重水の混合液を用いて,含水率の検出精度を検討し,提案OCMシステムでは散乱係数が変化に依存せず,含水率の断層検出を2%程度の誤差に抑えて可能であることを示した.また,提案OCMシステムを皮膚や軟骨のex/in vivo計測に適用し,現システムの問題点を検討した.その結果,生体組織の組織構造が変化する界面(各層と表皮との界面など)における,反射係数の変化が含水率計測に影響を与えるため,反射係数の空間変化を考慮して含水率の検出を行うシステムへ改良する必要があることが分かった.一方,歪み計測のアルゴリズム開発としては,ファントムOCT画像を用いて3次元歪み検出能について検証し,到達目標の20μmの解像度において検出歪み量精度を0.01%の3次元断層歪み分布が取得可能であることを示した.更に,提案システムを皮膚,軟骨,動脈硬化などのex/in vivo計測に適用し,3次元歪みと組織構造との対応を検討した.23年度では,3次元歪み検出アルゴリズムを更に向上させ,ボクセル変形を考慮した変形解析を導入し,更なる検出精度の向上を可能とする計画を考案した.
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