研究概要 |
本研究の目的は,ヒトの視覚情報が大脳視覚野に至るまでの2つの伝達経路(M経路とP経賂)について, (1)両経路の機能評価を同時に短時間で行う他覚的方法を確立すること (2)両経路の応答に視覚的注意が与える影響を定量的に捉える他覚的方法を確立すること. の2点である. 本年度は,昨年度に妥当性を確認した(1)の方法について,適切な刺激条件を調査するための視覚誘発電位(VEP)実測と評価を追加した.提案法では,M/P経路同時に刺激し,かつVEPから両経路の機能評価を分離抽出して,機能バランスを適切に評価できるような視覚刺激として,正弦波縞を2値の疑似ランダム系列(PRBS)にしたがって反転する刺激を採用し,その空間周波数を連続的に変化させることでM/P経路を選択的に刺激している.本年度は,この刺激の大きさ(視角)を9.2度とし,空間周波数の範囲をM/P経路応答を含む0.01~8c/dの他に各経路が選択的に応答すると考えられる0.01~2c/d,4~8c/dについても測定を行った.また,VEP検出部位も追加した.その結果,PRBS刺激の空間周波数の増減に応じて,後頭部のVEPの1次・2次バイナリ核関数が,最も顕著に規則的に変化する傾向を示し,M/P経路選択的な応答を得ることができた.加えて,刺激後半ではピーク潜時が延長する傾向も見られ,刺激への順応を回避する必要性が示唆された.これらを踏まえ,より適切な刺激系列を確定した. 目的(2)については,先行研究調査から刺激条件の策定を行ったが,条件の確定に至らず,次年度の課題として残された.
|
今後の研究の推進方策 |
研究目的に挙げた(1)で必要な追加測定を行い,妥当な測定条件を確定するとともに,(2)についての実測による検証に着手し,計画年度内に目的を達成する予定である.研究進行が遅れた要因の研究時間については,研究代表者が2012年度後半に所属機関における特別研究期間を確保しており,この期間中にこれまでの遅れを取り戻せるものと考えている.
|